旅の現象学

2012年から2013年にかけてのユーラシア大陸自転車旅行の記録です。

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 バラナシはガンジス河畔のヒンドゥ教の一大聖地。全ての罪を洗い清めるというガンガーで沐浴するために、亡くなった親族を火葬場で燃やしガンガーに流すために、インド中から多くの人が集まるこの街は、これまでの道のりで僕が感じてきたインドのインドらしさが一段階濃く凝縮されているような街だった。

 着いた翌日は、春の訪れを祝って色水をかけあったり色のついた粉を塗り合ったりするホーリーというヒンドゥ教の大きなお祭。水かけはぴちゃぴちゃ掛け合ったりする可愛いものではなく、屋上からバケツで狙ったりと、本当に容赦がないので、外を歩いている人は警官や巡礼者みたいな人を除いて、皆、びしょびしょの色まみれになる。

勇気を出して外に出るとゾンビ映画のような光景。
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こんなになりました。まあいい話のたねにはなった。
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 バラナシは多くの旅行者が集まる街だけど、観光名所というものはあまりない。僕も滞在中は、ほとんどガート(階段のようになっている河岸)とその周りの路地が入り組んだ区画を散歩していただけだった。しかし、例えばアーグラ―はタージマハルとアーグラ―城を一度見たら、それで満足して去ることが出来るのだけど、バラナシではいくらガンガーを眺めていても何かをまだ見ていない、そういう感覚が残る。それで後ろ髪を引かれる思いで滞在が一日延び、更に自転車のパンクでもう一日延び、結局この街に四日間滞在した。

以下、主にガンガーの写真。

朝、沐浴する人達。
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洗濯をしたり、体を洗ったり。聖なる河だけど、同時に生活の舞台でもある。
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ボートに乗って岸を眺める。
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対岸は打って変わって静かで何もない空間が広がっている。
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毎夜、一番大きなガートではプジャというヒンドゥ教の儀式をやっていて多くの人が集まる。
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インドの他の街と同じように、ここでも犬や猿や牛やヤギが好き勝手に生きている。犬の寝かた一つとってもインドは今まで通ってきた他の国とは一味違う。彼らは道の真ん中でも縮こまることなく、ばたんと横倒しで死んだように眠る。動物たちの何事も受け入れているかのような泰然自若とした様子は、インド人のそれとかなり重なり合う。動物が人に影響されてこうなったのか、あるいはインドの何かが人間にも動物にも同じような影響を与えてこうなっているのか、それは分からないけど、彼ら動物たちがインドの独特の空気感を作るのに一役買っているのは間違いない。
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 ガンガーは聖なる河なのに河岸にはゴミが堆積し、生活用水は垂れ流し。すぐ上の方の河岸では二十四時間休むことなく火葬場で遺体が燃やされ、灰が河に流されている。まだ十分に生きていないとされる子供の遺体などは燃やされることなく、そのまま重りを付け河に沈められている。ヒンドゥ教徒はそうすることで輪廻から解脱することが出来ると信じているからだ。そんな河に当たり前のように全身を浸し、更に体を洗ったり、洗濯をしたりするインド人を見ていると、今までの自分のものの見方や感じ方が少し相対化される感じがした。

 泊まったゲストハウスで、イスタンブールの日本人宿ツリーオブライフの黄金時代を一緒に過ごした二人と再会したのだけど、その内の一人が言った「インド人は僕達と見ている世界が違うんじゃないか」という言葉が印象に残っている。僕は最初、子供と大人で見ている世界が違うとか、そういうレベルのことを言っているのかと思ったのだけど、もっと深いレベル、極端に言えば網膜レベルで違うんじゃないかという話だった。インド人の聖なるものとの向き合い方や死生観に、想像の及ばないものを感じていた僕は、あるいはそうなのかもしれないと思った。その考えはこれまでの旅を通して、色々な文化に生きる人達の中に、違いよりもむしろ共通することを多く見出してきた僕には新鮮だった。

 上の方に書いた、ガンガーをいくら眺めても、そこにある何かを見れていない感覚もそこにつながっているのかもしれない。ただ、ガンガーを眺めていると、その正体が分からなくても、大きな何かが目の前にあるという不思議な安心感がある。多くの旅人がこの街に引きつけられる気持ちが分かった気がした。

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さんふぃ

Author:さんふぃ
ポルトガルロカ岬から、日本に向かって主に自転車で旅行中です。

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