旅の現象学

2012年から2013年にかけてのユーラシア大陸自転車旅行の記録です。

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 プリトヴィツェ湖群国立公園からは沿岸のスプリトという街を目指して走った。スプリトまでの距離は約210km。二日で到着するべく出発したのだけど、一日目はこの旅始まって以来の強い向かい風が吹いていて、全くスピードが出なかった。ただこういう日は道行く人たちがいつも以上に優しい。

車を停めて、缶入りの飲み物をくれる男性二人組がいたのだけど、見たらビールで笑った。日本だと飲酒運転幇助になる気がする。
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 夕暮れ頃、道路沿いのレストラン前で自転車を止めて地図を確認していると、レストランにやってきたおじいちゃんが、めちゃくちゃ親しげに握手したり肩を組んできたりしながら一緒に何か飲んでけ、と言ってきた。暗くなる前に近くの町で宿を見つけたかったので、遠慮したかったのだけど、うまくこちらの意思を伝えることが出来ず、結局飲んでくことに。そして「ノーアルコール」と言ってコーラを頼んだにも関わらず、結局出てきたのはアルコール入りのコーラ。おじいちゃんは終始にこにこドイツ語(クロアチアはドイツ語を喋れる人が多い)で何か話してたけどほとんど何言ってるのか分からなかった。言葉が途切れると取りあえず「乾杯!」。一杯だけのつもりが結局三杯も飲まされてしまった。でも懸案だった宿探しは、ここのレストランの主人が隣町で経営している宿に安く泊まらせてもらえることになったので助かった。

絵に描いたような農家のおじさんだけど、車の整備とかをやっていた人らしい。
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 結局この日は70km弱しか走れなくて、翌日スプリトに着くには約140km走らなければならないことになった。で翌日、ひたすらこぎ続けて何とか着きました。走った距離はこの旅最長の143km。ただその後数日疲れが残り続け、自転車が明らかに重くなったので、あんまり効率が良かったとは言えないと思う。

スプリトの町並み。昔の宮殿の遺跡の中が町になっている。
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 その翌日はスプリトに留まり、町を散策したり、洗濯などの用事を片づけたりしていたのだけど、午後ブレーキ交換のために来た自転車屋の入り口で前のお客さんが出てくるのを待っていると、目の前の道路で信号を待っている車から男の人が出てきて、何やらこちらに向かって叫んでいる。最初は自転車屋の知り合いか何かだと思っていたのだけど、どうやら僕に向かって叫んでいるらしい。何なんだろうと思っていたら、彼は車の中から金色に光る缶を取り出し、高々と掲げた。僕は思わず大声をあげてしまった。それは前々日に僕が路上でもらったビールだった。それから彼はこちらに駆け寄ってきて、抱きついてきたのち握手をした(クロアチアの人は本当にスキンシップが多い)。彼は前々日に車をとめてビールをくれた二人組の一人だった。「まさかこんなとこで会うとは思わなかったよ。クレイジーだね!」フィリップと名乗った彼は言った。僕達はしばらく立ち話をした後、夜に待ち合わせをしてごはんを食べに行く約束をし一旦別れた。

 夜、フィリップと落ち合うと、僕にビールをくれたもう一人の男性のところに行くことになった。車の床には僕がもらったのと同じビールが三本転がっていた。この国に限らずヨーロッパには飲酒運転と言う概念がないんじゃないかと思う。もう一人の男性はヴェドランといい、フィリップの奥さんのお父さんとのことだった。彼が自転車で走る僕を見かけ、ビールをあげようと決めたのだと、フィリップは言った。「彼にビールをあげよう、いつかまた彼に会うときがあるかもしれないからってヴェドランは言ってたんだよ。それがさっそく今日だとはね。まったくクレイジーだよ!」とフィリップはクレイジーを連発していた。

 ヴェドランの家で彼の家族と一緒にごはんを食べた。その時、ヴェドランがサロン経営者だという話を聞いて、僕が何も考えずに髪を切りたいと思ってたと言ったら、ヴェドランはじゃあ明日うちで切っていけばいいじゃないかと言った。ちゃんとコミュニケーションがとれるヴェドランに切ってもらえるのはとても魅力的に思えたのだけど、先を急ぎたい気持ちも強く(そのために前日に140kmを走ったりしている訳で)、迷いながらも翌朝出発する方に傾いていたら、フィリップが「明日の朝、俺、水道関係の仕事があるんだけど一緒にやらないか。その後に髪切ればいいんじゃない」という訳の分からない提案を始め、しかしなぜかそれがとても魅力的に思えて、結局その話に乗ってしまった。

ヴェドラン一家。一番左がヴェドラン。左から二番目がフィリップ。
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 翌朝、七時半にピックアップしてもらい、向かった先はフィリップの知り合いの家。そこの庭に水道管を通すための溝を掘るのがその日の仕事だった。「このケーブルは電話線だから気を付けてね。この前、間違って切っちゃてさ。周りの家の電話が使えなくなっちゃったんだよ」仕事の説明の際、フィリップはくったくのない笑顔で言った。何と言うゆるさだろう。日本で自分が同じことをやったら間違いなく胃痛に苦しむはず。

何てゆるい表情なんだ。
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 仕事を終えると、ヴェドランのサロンに連れて行ってもらい、髪を切ってもらった。外国で髪を切るの不安だったのだけど、すごくいい感じにしてもらえた。切り終わってお金を払おうとするとヴェドランがいらないと言うので、「この髪、すごく気に入ったし、あなたはプロなんだから払わせてよ」と僕が言うと、「じゃあそこのバーで飲み物をおごってくれ」とヴェドランが言った。それでバーで一緒に一杯飲んで、店長にお金を払おうとすると、今度は店長が首を横に振った。うわー。

 髪を切った後は、ヴェドランの家でお昼ごはんをごちそうになり、その後、この日泊めてもらうことになっていた郊外にあるフィリップの家に自転車で向かった。その後もフィリップと彼の家族と一緒に川辺を散歩したり、知り合いの溜まり場でサッカー観戦をしたりと一日中、ゆったりとした暖かい時間を過ごさせてもらった。

川辺のフィリップ家。
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ガレージを改造した溜まり場で地元のおじさんたちと。フィリップは30歳で周りのおじさんたちと比べるとだいぶ若いのだけど、彼らと自然な友達付き合いをしているように見えた。すごくいいなと思った。
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62日目の走行距離約66km(ロカ岬からの走行距離3797km)。
63日目の走行距離約143km(ロカ岬からの走行距離3940km)。
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まとめ【62〜65日目:プリトヴ】

 プリトヴィツェ湖群国立公園からは沿岸のスプリトという街を目指して走った。スプリトまでの距離は約210

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さんふぃ

Author:さんふぃ
ポルトガルロカ岬から、日本に向かって主に自転車で旅行中です。

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