旅の現象学

2012年から2013年にかけてのユーラシア大陸自転車旅行の記録です。

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 パドヴァに着いた翌朝、情報を集めてみると、昨日までとは違って今日のヴェネツィアは歩けないような状態ではないらしい。それに悪天候の中、自転車をこぐ日が続いたせいか、体がだるく、少しゆっくり休みたかった。それで結局、パドヴァから約40km、ヴェネツィアまで電車で約10分のメストレという街にこの日は泊まることにした。
 午後三時くらいにメストレに着くと、自転車や荷物を置いてヴェネツィアに出かけた。水は引いていて苦労することなく街を歩けた。むしろ濡れた石畳に反射する街灯の光がとてもきれいでいい日に来たと感じた。
DSC_3812.jpg
DSC_3807.jpg

 五年前の旅行で初めてヴェネツィアを訪れたとき、どこを見回しても観光客だらけの街が大きなテーマパークのようにしか感じられなかったのを覚えている。それは僕の持っていたヴェネツィアのイメージと違っていて、歩いても歩いても僕がこの街に求めていた何かはずっと満たされないままだった。それに加えて宿でデジカメを盗まれたこともあり、ヴェネツィアにはあまり良いイメージを持っていなかった。

DSC_3835.jpg
DSC_3844 (2)
DSC_3854.jpg

 五年前にも見た、テレビや雑誌で見るようなヴェネツィアの風景が通り過ぎていく。前回の記事でも書いたように今回は観光客の多さも織り込み済みだったし、幻想も抱いていなかったから、ここでしか見られない風景を見ることを純粋に楽しんでいた。だけどそれはきれいな写真や映像を見る楽しさ以上のものではなかった。

 でも途中で何かが変わった。何がきっかけを作ったのかは分からない。でもそれはヴェネツィアのランドマーク的な風景ではなくて、もっと些細な、意識の表層に留まらずに通り過ぎていくようなものの蓄積だったのだと思う。道行く誰かの顔、匂い、風、光の反射、たぶんそういうものが歩くリズムと一緒になって、いつのまにか自分の中にいい音が響いていた。一度、そういう音に満たされると街と意識がかみあい、風景は自分から語りかけ、僕の中では新しい言葉やそれによる気付きが生まれ続けていった。リスボンでも感じた世界の豊かさの中に身を浸しているような感覚と共に僕は歩いた。街を歩くことは、街と自分のジャムセッションのようだと思う。今回それがとてもうまくいった。

 結局、ヴェネツィアには二日間滞在し、三日目の朝に出発した。前回この街を出発した時とは違って、また訪れたいという気持ちが自分の中にあった。

55日目の走行距離約40km(ロカ岬からの走行距離3243km)。
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://kokosadokosa.blog.fc2.com/tb.php/27-0b3e3a0d


より大きな地図で 旅の現象学 を表示

さんふぃ

Author:さんふぃ
ポルトガルロカ岬から、日本に向かって主に自転車で旅行中です。

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。