旅の現象学

2012年から2013年にかけてのユーラシア大陸自転車旅行の記録です。

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 パドヴァに着いた翌朝、情報を集めてみると、昨日までとは違って今日のヴェネツィアは歩けないような状態ではないらしい。それに悪天候の中、自転車をこぐ日が続いたせいか、体がだるく、少しゆっくり休みたかった。それで結局、パドヴァから約40km、ヴェネツィアまで電車で約10分のメストレという街にこの日は泊まることにした。
 午後三時くらいにメストレに着くと、自転車や荷物を置いてヴェネツィアに出かけた。水は引いていて苦労することなく街を歩けた。むしろ濡れた石畳に反射する街灯の光がとてもきれいでいい日に来たと感じた。
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 五年前の旅行で初めてヴェネツィアを訪れたとき、どこを見回しても観光客だらけの街が大きなテーマパークのようにしか感じられなかったのを覚えている。それは僕の持っていたヴェネツィアのイメージと違っていて、歩いても歩いても僕がこの街に求めていた何かはずっと満たされないままだった。それに加えて宿でデジカメを盗まれたこともあり、ヴェネツィアにはあまり良いイメージを持っていなかった。

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 五年前にも見た、テレビや雑誌で見るようなヴェネツィアの風景が通り過ぎていく。前回の記事でも書いたように今回は観光客の多さも織り込み済みだったし、幻想も抱いていなかったから、ここでしか見られない風景を見ることを純粋に楽しんでいた。だけどそれはきれいな写真や映像を見る楽しさ以上のものではなかった。

 でも途中で何かが変わった。何がきっかけを作ったのかは分からない。でもそれはヴェネツィアのランドマーク的な風景ではなくて、もっと些細な、意識の表層に留まらずに通り過ぎていくようなものの蓄積だったのだと思う。道行く誰かの顔、匂い、風、光の反射、たぶんそういうものが歩くリズムと一緒になって、いつのまにか自分の中にいい音が響いていた。一度、そういう音に満たされると街と意識がかみあい、風景は自分から語りかけ、僕の中では新しい言葉やそれによる気付きが生まれ続けていった。リスボンでも感じた世界の豊かさの中に身を浸しているような感覚と共に僕は歩いた。街を歩くことは、街と自分のジャムセッションのようだと思う。今回それがとてもうまくいった。

 結局、ヴェネツィアには二日間滞在し、三日目の朝に出発した。前回この街を出発した時とは違って、また訪れたいという気持ちが自分の中にあった。

55日目の走行距離約40km(ロカ岬からの走行距離3243km)。
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 イタリアに入ってから悪天候が続く。ピアツェンツァからヴェローナまでの距離は140kmくらい。地図を見る限り道も平坦なのでうまくいけば一日で着けるかもと思っていたのだけど、この日は一日中雨で、夕方からはほとんど嵐のような状態だったので結局、ヴェローナまで残り60kmくらいの地点で民宿に泊まった。ちなみにイタリアの一般的な宿の値段はスペインとフランスの中間くらい。35~40ユーロ位の宿であれば苦労することなく見つけられる。

翌日午後にヴェローナに着き街を散策した。
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 歴史のある建物が多く残る街並みが、人々の活気で色づいているダイナミックな街だった。
 ところでヨーロッパの有名な街は本当に観光客が多い。五年前に旅行した時は、それが自分の抱いていたヨーロッパの街の情緒に一致しなくて、違和感を感じていたのだけど、今回の旅行では最初からそういうものだと分かっていたので特に気にすることなく楽しめている。
 これは最近気付いたことなのだけど、自分の抱いているイメージに目にしたり聴いたりしているものを当てはめようとすることは、僕にとって共鳴しようとする楽器を抑え込んでしまうことに似ている。昔聴いていた音楽を何かを期待して聴いてみてもなかなか響いてこなかったりするけど、たまたまラジオでかかっているのを聴いたりするとなぜかとても響いてきたりする。ある夜中、用を足しにテントから外に出て、何気なく空を見上げて視界に入った天の川は、それを求めて空を見上げたときよりもずっとすっと響いてきた。

 翌朝、ジェノヴァで知り合ったコロンビア人とたまたま再会し、次はヴェネチアに行くと伝えたら、昨日までヴェネツィアにいた彼は、ヴェネツィアは大雨で街の大部分が冠水していて歩くのがすごく大変だったと教えてくれた。インターネットで調べてみるとYahooのニュースにもなっていた。最初の予定ではヴェネツィア内にあるユースホステルまで自転車と水上バスで行くつもりだったけど、それはかなり厳しそうだ(冠水を抜きにしてもヴェネツィアはなかなか自転車には厳しい街で、街の中で自転車に乗ることが出来ない上、階段も多い)。そうなるとヴェネツィアに行くには近くの街に自転車を置いて電車を使うことになる。もともとヴェネツィアにはそんなに執着がなかったし、今後の予定的にちょっと先を急ぎたかったので、寄らなくてもいいかなと思いながら、この日はとりあえずパドヴァという街に向かった。午前中は晴れていたのだけど、午後には曇りだし、夕方頃から霧が濃くなり一気に気温が下がった。久しぶりに晴れた空の下を一日中走りたいと思った。

パドヴァの街の中心の広場。
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52日目の走行距離約82km(ロカ岬からの走行距離3052km)。
53日目の走行距離約62km(ロカ岬からの走行距離3114km)。
54日目の走行距離約89km(ロカ岬からの走行距離3203km)。
ステファノが去った後、ジェノヴァにもう一泊して街を歩いた。11月を飛ばして12月になってしまったような寒さで、ホステルを出るときには十分だと思っていたロングスリーブTシャツにウインドブレイカ―だけだと我慢できず、街でセーターを買ってしまった。

ジェノバの街並み。
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イタリアの都市はどっしりとした建物が多い。
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翌日、出発しようと外に出ると、三日ぶりの晴れ空にも関わらず、昨日以上の寒さだった。ジェノヴァから最短の経路で西へ進むには80kmほどの山岳地帯を越えなければならない。初めは山岳地帯をある程度迂回出来る長めの経路をとって西へ進もうと思っていたのだけど、ホステルの人に訊いたら、短い方のコースは景色がとてもいいらしい。それで僕はそちらの道に行くことにした。

丘からジェノヴァの街を見下ろす。
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この日は山でキャンプをする予定だったのだけど、日が沈んだ後、寒さが加速度的に増して、更に雨が降りそうな空模様だったので、結局標高800メートルくらいのところにある小さな町のホテルに泊まった。町の電光掲示板の温度計を見ると、-1度になっていた。つい数日まで半袖ハーフパンツで自転車をこいでいたのが嘘のようだ。

翌日はやはり雨になった。しっかり防寒対策をして走り出したのけど、グローブは冬用のものをまだ手に入れていなかったので、冷たい雨に濡れて手が凍えた。しかし湿った冷たい山の空気の中を走りぬけていくのはすごく気持ち良かったし、霧がかった山の景色も幻想的で本当に素晴らしかった。
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ときどき現れる小さな村もとても美しかった。
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標高の高いところでは雪が積もり始めていた。
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この日は山岳地帯を抜けて、ピアツェンツァという街に泊まった。
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50日目の走行距離約33km(ロカ岬からの走行距離2865km)。
51日目の走行距離約105km(ロカ岬からの走行距離2970km)。

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さんふぃ

Author:さんふぃ
ポルトガルロカ岬から、日本に向かって主に自転車で旅行中です。

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