旅の現象学

2012年から2013年にかけてのユーラシア大陸自転車旅行の記録です。

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 朝、インチョン国際空港に着く。外は雨が降っていてかなり寒い。体感では日本の11月くらいの寒さ。インドからベトナムまでずっと暑い国に滞在していたから体がちょっと驚く。

空港からソウル中心部までは、組み立てた自転車を電車に載せて移動。自転車の組み立てもこれで最後。
DSC_0418.jpg

 ソウルは既に一度来たことがあってそんなに観光しようという気にならなかったから、ちょっと街を歩いた後は、チムジルバンという韓国式のスーパー銭湯みたいなところで久しぶりにお湯に浸かってずっとまったりしていた。

南大門。
DSC_0441.jpg

ソウル一の繁華街ミョンドン。
DSC_0447.jpg

 一日目はそのままチムジルバンに泊まり(チムジルバンや韓国のサウナは大抵24時間営業だから、韓国では以後も大抵このどちらかに泊まっていた)、翌日約450km先のプサンに向けて出発した。

 韓国を走るので一番苦労したのは、地図の問題。なぜだか韓国ではこれまでどこの国でも問題なく使えたGoogleマップのナビ機能が使えず、また地名の表記も大半がハングルのみ。その代わりNaverMapという韓国独自のマップサービスが発達していて、自転車のルート検索や自動車専用道を除いたルート検索なども出来る。ただ残念ながら韓国語しか使えないので、韓国語が分かる知人に協力してもらって使い方を覚え、それを利用していた。

まずは漢江に出る。橋を渡っていると川沿いを走るすごく気持ちよさそうな自転車道が見えた。
DSC_0470_20130524091458.jpg

 この自転車道は何と国を縦断する形でプサンまで続いている。ルートを考える際、この自転車道を走ることも考えたのだけど、その場合プサンまでの距離は約550kmと約100km遠くなり、あらかじめ予約した五日後のフェリーに間に合わせるのが厳しくなるので一般道を走ることにしていた。でもあんまり気持ちよさそうだったので途中まで自転車道を走ることにする。

週末だったので、本格的なバイクウェアを着てロードバイクに乗っている人から、家族連れでゆったり走っている人まで、たくさんの人で賑わっていた。自動車の音から離れた柔らかいざわめきの中を、涼しい空気を肌に感じながら走るのはやっぱりとても気持ちが良かった。
DSC_0481.jpg

段々と都会を離れ、緩やかな山に囲まれた牧歌的な風景に変わっていく。この辺りで自転車道を見失って、一般道に戻った。
DSC_0485.jpg

 次の日からはずっと一般道を走った。山を、町をいくつも通り過ぎていく。色々な国を走ってきた後にこの国を走ると、日本とこの国の近さを強く感じる。行きかう人達の表情、テレビのバラエティーのテロップや効果音、お店や看板が消費者に伝えようとするメッセージ、目にする色々なものが日本のそれらが向いている方向ととても近い方向を向いている。最近色々あるけどやっぱりお隣さんだなぁとつくづく思う。

道中の写真を何枚か。
DSC_0556.jpg

DSC_0530_20130524110609.jpg

DSC_0494.jpg

DSC_0514.jpg

 ソウルを出発して四日目の朝、プサンまでの距離は残り180km。翌日の18時頃までにはプサンでフェリーの入船手続きをしなければいけないのに、山が多かったり、途中寄り道をしたりでずいぶんと距離が残ってしまった。プサンまで残り120kmくらいの地点で日が暮れ出す。でも翌日のことを考えるとあと50kmくらいは進んでおきたかったので走り続けていると、ロードバイクに乗ったおじさんが話しかけてきた。柔らかい物腰のすごく感じのいいおじさんだった。英語がそこそこ通じるので色々話をしながら一緒に走る。おじさんはロードバイクで僕は荷物をたくさん積んだマウンテンバイクだからだいぶスピードを合わせてもらっていたと思う。ジュヨンさんというそのおじさんは、僕が通ってきた15km手前のテグという大きな街で美術の先生をやっていて、毎日家から30kmくらいの道のりを自転車で通っているらしい。
 
 一時間以上一緒に走って、交差点のところでジュヨンさんは止まり、今夜は家に泊まっていかないか、と僕に尋ねた。すごくありがたかったけど翌日が問題だった。ジュヨンさんにプサンまでの距離を訊くと残り100km。しかも山がいくつかあるらしい。泊まらせてもらうとすると翌日は前回のベトナム以上にぎりぎりになる。でも迷った末に泊まらせてもらうことにした。僕がこの旅から受け取った最良のものの一つはこういう出会いによるもので、ユーラシア大陸最後の夜のこの出会いは、大陸からの餞別のように思えたりもした。それで僕は素直にそれを受け取ろうと思った。

 おじさんの家は静かな山の中の町のはずれにあった。奥さんが作るキムチチゲやジュヨンさんの手作りのビールをごちそうになり、本格的なレコードプレイヤーでクラシックや韓国の古い歌謡曲を一緒に聴いた。かなりの音楽一家で家にはピアノにオルガン、ギターにトランペットがあった。奥さんは少し前までプロのピアニストだったらしい。ジュヨンさんはあまり得意ではない英語で、聴いている音楽の良さを話してくれた。柔らかいけど感情のこもった声だった。その話を聞いていると全く言葉が分からない韓国語の歌でも少し情景が見えてくるようだった。旅の話もした。ジュヨンさんはいつか沖縄を自転車で走るのが夢らしい。

翌日の早朝、ジュヨン夫妻に見送られて出発。
DSC_0544.jpg

ユーラシア大陸も残り約100km。ジュヨンさんと出会ったおかげで、最期にもう一度、この旅全体のしっかりとした手応えを感じながら走ることが出来た。
DSC_0548.jpg

夕方プサンに着く。案の定観光は全く出来なかったけどまあいいや。
DSC_0566.jpg

無事にフェリーに乗り込む。写真はプサンの夜景。ユーラシア先生、ありがとうございました!
CSC_0583.jpg

247日目の走行距離約87km(ロカ岬からの走行距離11871km)
248日目の走行距離約108km(ロカ岬からの走行距離11979km)
249日目の走行距離約93km(ロカ岬からの走行距離12072km)
250日目の走行距離約79km(ロカ岬からの走行距離12151km)
251日目の走行距離約100km(ロカ岬からの走行距離12251km)
スポンサーサイト

より大きな地図で 旅の現象学 を表示

さんふぃ

Author:さんふぃ
ポルトガルロカ岬から、日本に向かって主に自転車で旅行中です。

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。